真宗大谷派西敬寺

天親(世親)(せしん)

 ヴァスバンドゥ、4〜5(世紀頃)、現在のパキスタンのPeshawarの人。弥勒(みろく)→無着(むじゃく))→世親とつづく唯識(ゆいしき)派三大論師の一人。無着の弟。無着と同じく初め小乗仏教(説一切有部(せついっさいうぶ))を学び、そのすぐれた学才によって名声をえたが、後に無着に感化されて大乗に転向し、唯識思想を組織大成した。著書としては、小乗時代に著した『倶舎論』、大乗転向後の『唯識二十論』『大乗成業論』『大乗五蘊論』『大乗百法明門論』『仏性論』など、さらには『中辺分別論』『大乗荘厳経論』『摂大乗論』などに対する註釈書がある。とくにその主著『唯識三十頌』はその後多くの論師によって註釈され、それら諸註釈を織り込んで玄奘が『成唯識論(じょうゆいしきろん)』にまとめあげるに及び、法相宗の所依の論書となるにいたった。(岩波仏教辞典)